1.【理解する④】
ストレスチェック制度の全貌
ここでは、ストレスチェック制度の全貌が
理解できるようご説明します。制度を理解し、スムーズに導入するために、お勧めしたいことは、厚生労働省から公表されている『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』をご活用ください。原則的なことが示されているからです。できれば、プリントアウトしてお手元に置いておくと、便利です。
ただし、ページ数が、全182ページもあり、質・量ともに読みごたえがあります。そのため、本サイトでは、”実務”にポイントを絞って、必要な内容をご紹介していきます。
➡ 4-1 大枠からから理解する導入のポイント
4-1-1 三本柱で“ガッチリ”取り組む、職場のメンタルヘルス
ストレスチェック制度を会社に根づかせるには、職場のメンタルヘルスを3つの予防活動から理解して、取り組むことをお勧めします。 なぜなら、この予防の三本柱の位置づけが不十分だと、せっかくの取り組みもその効果が薄れてしまうからです。
ストレスチェック制度を導入するに際には、ぜひ、この三本柱から、それぞれに必要な取り組みを位置づけになっているか、ご確認ください。
【1次予防】:健康維持・増進で病気を未然予防
従業員が自らのストレスに気づく・対処する、そして職場環境の改善を通じて、メンタルヘルス不調にならないように予防する活動のこと。
【2次予防】:早期発見・対処で悪化予防
メンタルヘルス不調に早く気づき、適切に対処して、悪化を予防する活動のこと。
【3次予防】:職場復帰支援で再発予防
メンタルヘルス不調になった従業員の職場復帰をサポ-トし、スム-ズな復帰と再発を予防する活動のこと。
以上が、職場のメンタルヘルスを進める上で、目印となる3つの予防活動です。
厚生労働省は、ストレスチェック制度の取り組みを、この3つの中でいう”1次予防”に位置付けています。その理由としては、ストレスチェックは、病気を見つけるためのものでなく、あくまで日頃の健康維持・増進に役立たせるためのものだからということです。
確かに、その趣旨から考えますと、”1次予防”がメインの取り組みです。
ただ、加えて申し上げれば、”2次予防”の要素もあるのではないかと、筆者は考えています。
その理由は、医師による面接指導があるからです。
そこでは、本人の健康状態を確認する中で、その悪化が懸念されるのであれば、医師から事業者宛に、就業上の措置をとることを想定されています。また、本人の状態に応じて、専門家への紹介もあり得ます。そのため、これらの点は、まさに早期発見・対応という”2次予防”の要素とも考えられます。
ストレスチェック制度の良い所は、従業員に対してストレスチェックを受けさせるだけでなく、きちんとその後をフォローする体制も含めて、義務化している点です。
やはり、ストレスが強い時には、やはり第3者のサポートがあることで、早い回復が見込まれ、悪化を防ぐことにもつながるからです。そのため、ストレスチェック制度は、単に”1次予防”だけで終わらせず、”2次予防”にもスムーズにつなげる仕組みにしていくことで、より厚みのある取り組みになっていくのではないでしょうか。
4-1-2 一般健康診断と比較するとよくわかる、“ストレスチェック制度”
ストレスチェック制度は、一般健康診断と比較すると理解しやすくなります。次の表をご参考にその違いをご確認してみてください。
一般健康診断 | ストレスチェック制度 | |
目的 | 従業員の健康状態の把握、 就業可否・適正配置等の判断・実施 |
従業員自身のストレスへの気づき、 就業措置の有無の実施。職場環境の改善 |
対策の位置づけ | 2次予防 | 1次(・2次)予防 |
実施頻度 | 1年に1回(2回必要な職種あり) | 1年に1回(以上) |
実施者 | 医師 | 医師、保健師、 看護師、精神保健福祉士 |
費用 | 会社負担 | 会社負担 |
受検の義務 | あり | なし |
事業者による結果の把握 | 事業者が従業員の結果を把握することは、可能 | 事業者は従業員の同意がなければ、把握不可 |
ストレスチェック制度は、一般健康診断とは、まずその目的が違います。
そのため、一般健康診断では、事業者は従業員の結果を従業員の同意なく把握することができます。
一方、ストレスチェック制度では、従業員自身のストレスへの気づきを促すことが目的であるため、結果を把握するには従業員の同意が必要です。また、受検も義務づけられていません。
しかしながら、ストレスチェック制度をより効果的な取り組みとするには、基本的には全ての従業員の受検が望ましいとされています。
だからこそ、事業者は、周知方法や、個人情報保護など従業員が安心して受検できる体制づくりが重要になります。
4-1-3 事業者が理解しておくべき6つのポイント
ストレスチェック制度は、労働安全衛生法の一部が改正され、2015年12月1日より施行されることになりました。その中で、実施責任は事業者となっています。よって、事業者のみなさんとしては、この制度のことを理解しておく必要があります。
では、事業者として、ストレスチェック制度で何をやらなければいけないのか、一言で言いますと、「ストレスチェックの実施と、医師による面接指導」です。
それが、従業員50人以上は必ずやらなければならず、50未満なら努力義務となっています。では、事業者としてこれだけは、知っておいて頂きたい6つのポイントをご説明します。
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事業者が、「省令等で定まった趣旨を踏まえて、ストレスチェック制度を実施すること」は義務ですが、従業員に受検義務はありません。
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事業者は、そのストレスチェック検査の結果を本人の同意なしに把握することはできません。
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事業者は、省令等で定める要件に該当した従業員からの申し出があった時は、医師面接を行わなければなりません。
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事業者は、ストレスチェックを受けないことや、面接指導の申出を行わないことやその結果をもとに、不利益な取り扱いをしてはいけません。
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事業者は、医師の面接指導の結果を勘案し、必要があると認める時は、適切な就業上の措置を講じなくてはなりません。
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ストレスチェック制度は、常時働いている従業員に対して、毎年1回以上は、実施し、その実施状況を所轄の労働基準監督署に報告しなくてはいけません。
➡ 4-2 流れから理解する導入のポイント
次に、ストレスチェック制度は、どのような“流れ”(=実施手順)で導入し、取り組んでいけばいいかを理解・確認しましょう。
以下に、厚生労働省から示されている『ストレスチェック制度の流れ』をご紹介します。「どのように導入したらいいか?」に疑問にお答えしていきます。まずは段階的に導入のイメージをもってください。
4-2-1 ざっと見る、ストレスチェック制度の流れ
厚生労働省から公表されている資料に、広報用として以下の『周知リーフレット』があります。その中で、「ストレスチェック制度の流れ」については、以下のように進めていくことが示されています。
まずは、↓
医師、保健師等がストレスチェックを実施
そして、↓
①労働者は事業者に、面接を申し出る
②事業者は医師に、面接の実施を依頼する
③医師は労働者に、面接を実施する
④事業者は医師から、意見を聴取する
⑤事業者は労働者に、就業上の措置を実施する
あとは、↓
関係者が必要に応じて、相談、指導、情報提供、連携を行います。
(出典:厚生労働省『周知リーフレット』2015年5月11日公表)
いかがでしょうか?
ストレスチェック制度を“ざっと見る”と、以外にシンプルのように思いませんか。
会社としては、このような流れで取り組める体制をつくることが、導入・運用に求められていることになります。ただ、各社さまとも事情が異なるため、社内のご担当者の方を中心に、その体制を作り上げねばいけません。
4-2-2. じっくり見る、ストレスチェック制度の流れ
では、具体的にストレスチェック制度を導入するための流れを見ていきましょう。
これは、厚生労働省から示されている『ストレスチェックと面接指導の実施に係る流れ』という資料です。前掲した4-1-1.3本柱で”ガッチリ取り組む、職場のメンタルヘルスの流れを具体化した図になります。まずは、ご覧になってください。
出典:厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(2016年4月11日改訂)公表)』
いかがでしょうか?
今度は、ストレスチェック制度を“じっくり見る”と、さきほどとは違い、逆に“複雑”のように感じられませんか?
しかし、分解すると、以下の5つのテーマにわけられます。
Ⅱ.ストレスチェック
Ⅲ.面接指導
Ⅳ.集団分析
Ⅴ.全体評価+報告
ストレスチェック制度は、この5つのテーマを実行することが求められています。では、次項でその5つのテーマのポイントを見てみます。
4-2-3 5つに分解して理解する、ストレスチェック制度の流れ
ストレスチェック制度をよりスム-ズに導入するにあたって、以下にその流れをまとました。実施に際して、具体的にすべきことの全体イメ-ジをつかみましょう。
Ⅰ.実施前にやること
実施体制を整えて、実施方法や実施規定をつくるという、導入に必要な準備
Ⅱ.ストレスチェック
①調査票の配布、記入(ITシステムを用いて実施することも可能)
②ストレス状況の評価・医師の面接指導の要否の判定
③本人に結果を通知
Ⅲ.面接指導(ストレスが高い人)
①本人から面接指導の申出
②医師による面接指導の実施
③就業上の要否・内容について医師から意見聴取
④就業上の措置の実施(必要に応じて)
Ⅳ.集団分析(努力義務)
①個人の結果を一定規模のまとまりの集団ごとに集計・分析
②職場環境の改善
Ⅴ.全体評価+報告
①ストレスチェック制度の実施状況の点検と、改善事項の検討
②労働基準監督署に報告(所定の様式を使用する)
これら5つに分解した項目を理解・準備・実施していくことになります。
具体的な導入の準備を始める前に、次項以降にご紹介する事柄も確認しておきましょう。ストレスチェック制度の位置づけがより明確になって、導入しやすくなります。
ちなみにこの流れは、厚生労働省から公表されている『ストレスチェック 導入ガイド』を改編したものなので、それも合わせてご覧になることをお勧めします。
➡ 4-3 義務化への対応として、やらねばならない4つのこと
スレスチェック制度が法制化になり、義務化になっていることに対応するためには、以下の4つのことを行う必要があります。この4つについては、本節でご紹介します。
(また、この他に努力義務となっている『集団分析』があります。次節でご紹介します。)
(1)『導入に必要な準備』
(2)『ストレスチェック』
(3)『面接指導』
(4)『監督官庁への報告』
4-3-1 導入に必要な準備
導入のために必要な準備として、まず次の3つ点から、ストレスチェック制度の大枠を固めましょう。
Ⅰ.目的:法律では一次予防とされています。
ストレスチェック制度の第一義的な目的は、メンタルヘルス不調の未然防止です。そのため、心の病気を見つけることを目的にすることはふさわしくありません。
一方で、努力義務となっている『集団分析』は、その目的は職場を活性化することにもつなげられます。さらに、それら従業員のストレス状況や職場を活性化するような環境改善の活動を通じて、生産性を向上することにもなり得ます。
導入に必要な準備としてまずは、自社として取り組むべき目的は何か、その方向性を定めましょう。
Ⅱ.目標:短期・中長期目標を掲げましょう。
ストレスチェック制度は初めて施行された取り組み。まずは、「何をどこまでやるのか?」あるいは「やれるのか?」、事前に予測しづらいこともあるでしょう。そのため、「やってみなければわからない!」というのが本音の所ではないでしょうか。
ただ結果はどうであれ、まずは到達したい目標を定めなければ、継続した取り組みになっていきません。そのため、目標を具体化しましょう。目標という目安があることで、取り組みが具体化します。
例えば、
・全従業員への周知徹底のために、PR活動を合計●回以上実施する
・ストレスチェック制度の受検率、全社で●%以上を目指す
・職場環境の改善を行う職場の数が、合計●箇所以上を目指す
Ⅲ.計画:PDCAサイクルでまわしましょう。
ストレスチェック制度は、毎年、1回以上は行う必要があります。そのため、PDCAサイクルで進めていくことができれば、それだけ改善していきます。
毎年、単発で終わらせるのではなく、社内に根づく取り組みとするには、PDCAサイクルで取り組みましょう。
そのため、例えば、既存で行っている労働安全衛生マネジメントシステムや、QC活動などにストレスチェック制度を組み入れることで、負担感を緩和させ、社内の活動に定着しやすくなります。
以上、導入のための準備として、3つのポイントをご紹介しました。
では、具体的にどのような手順で進めればいいかは、第2章・第3章で詳しく取り上げています。
4-3-2 ストレスチェック
ストレスチェック制度の主たる目的は、一次予防の「心の病気の未然防止」。
そのために必要なのは、セルフケア活動。つまり、『自分の健康は自分で守る』ことの実践です。
これを具体的に行うやり方として、『ストレスチェック』という調査票を使うことになります。そして、その結果を通じて日々の心の健康づくりに活かすということが期待されています。
そこで一番のポイントになるのが、調査票です。
調査票を利用するにあたっては、厚生労働省から推奨されている『職業性ストレス簡易調査票』があります。あるいは、これを使用せずとも科学的な根拠がある調査票であれば、オリジナルを作成してもよいとのこと。ただ、ほとんどは、『職業性ストレス簡易調査票』を使用しているようです。
そしてもう一つのポイントは、外部機関を活用するかどうかです。
つまり、外部機関を活用して従業員向けのストレスチェックを行うか、それとも全て自前で実施するか、2択になります。その選択に当たっては、それぞれのメリット(・デメリット)から考えましょう。
例えば、外部機関を活用すれば、負担軽減・スム-ズな導入がメリットにあげられます。一方、自社だけで構築・実践する場合では、コストを抑えることができます。厚生労働省は、『ストレスチェック制度実施プログラム』を無料で公開しているので、自社だけで行うこともできます。
以上、ストレスチェックでは、使用する調査票と外部機関の活用をどうするのか?がポイントなります。ただ、これらは手段ですので、目的・目標となる、セルフケアの意識向上や、高い受検率になるようにするためには、その準備や運用が必要になってきます。第2章以降で詳しくご紹介していきます。
4-3-3 医師による面接指導
医師による面接指導が必要なのは、高ストレスでがんばっている従業員の心の健康を守るためです。だから、ストレスチェックのアンケートを受けさせればそれでいい、という訳ではありません。
ストレスチェックの結果、高いストレス状態を示した従業員の心の健康状態をきちんと確認して、必要であれば、安全配慮義務の観点から何らかの対応をしなければなりません。
それは、例えば、次の①セルフケアの促進、②就業上の措置、③専門機関への受診勧奨があげられます。
①セルフケアの促進とは?
ストレスチェックを受検することでわかる、ストレスの原因・ストレス反応・サポ-ト要因に関して、受検者の気づきが深まるように、面接指導を行うことです。
②就業上の措置とは?
現状の勤務状況のままでは、安全が守ることができなかったり、健康状態を悪化させてしまう可能性がある場合には、現状を変えることが望まれます。
ただし、その措置を実行する上では、本人や上司等も含めて、情報を総合的に捉えて、対応する必要があります。
③専門機関への受診勧奨とは?
受検者の健康状態について、医学的に治療が必要なのかどうかを、専門機関の医師に診断してもらうために、その受検を勧奨することです。
その結果、治療の必要がないと分かれば安心です。一方で、仮に治療が必要な状態であったとしても、早期発見ということで、それだけ悪化を防ぐ機会となります。
4-3-4 監督官庁への報告
ストレスチェック制度を実施したら、監督官庁である労働基準監督署に対して、その実施報告が義務づけられています。
ストレスチェック制度は1年以内で1回以上の実施が義務づけられていますので、毎年その実施報告の提出が必要です。ちなみに、初年度にあたる今年の締切日は、2016年は11月30日となっています。提出期限厳守、早めの準備と実施を心がけましょう。
また、実施の報告には、所定の様式がありますので、それに記入して提出することになります。詳しくは、第3章でご紹介します。
➡ 4-4 努力義務となっている、”集団分析の位置づけ”
では、ストレスチェック制度の取り組みについて求められていることの二つ目、努力義務としての“集団分析”について、その位置づけをご説明します。
集団分析とは、つまり“ストレスチェックを使った自社分析”です。
ストレスチェックを受検した従業員のデータを用いて、ある集団ごとに集計・分析をして、その傾向を把握します。そして、その集団ごとの集計・分析をもとに、職場環境を改善するための活動につなげることが推奨されています。
4-4-1 会社の姿勢が垣間見える?
まず、実務を担う者からこの“集団分析”について、一言で本音を申し上げさせて頂くならば、それは、「会社の意志が表れる」ということです。
つまり、集団分析は“努力”義務なので、“努力”するかどうかは、各事業者の判断に委ねられています。
ただ、事業者がその判断を行うにあたり、ストレスチェック制度を企画・推進する”担当者の想い”や、”抱えている状況”にも、関係するように感じます。
つまり、新たな取り組は、それだけ負荷となるからです。”担当者”の方が、抱え込み過ぎないようにするためにも、まず理解を深めて頂けるよう、ご説明していきます。
4-4-2 国が勧めるねらい
国が、この“集団分析”を通じた取り組みを推奨するには、理由があります。それは、メンタルヘルス不調の未然防止の取り組みを強化するためとされています。
つまり、従業員個人のストレス軽減だけではなく、職場が抱えるストレスにも目を向けて職場環境を改善することで、その目的を果たそうと考えているねらいがあります。
さらに、集団分析を通じた取り組みを行うことで、個人としての健康力が高まるだけでなく、法人という組織としての健康力も高まることを見込んでいると思われます。
しかしながら、多くの企業にとってストレスチェック自体が新たな取り組みであり、また事業所の事情も異なりますし、さらには職場環境改善のやり方も普及されているものではないため、初年度は、努力義務になったのではないでしょうか。
たた、今後、ストレスチェックと職場環境改善とがセットになることで、働く個人も、会社組織も互いの健康と成長につながる好機なるものと期待しています。
そのためにも、ストレスチェック制度の趣旨の理解と、適切な実施となるよう、継続的な支援や働きかけが必要だと考えます。
4-4-3 ポジティブな取り扱いへ
さらに、“集団分析”は、従業員への衛生面の充実化を図ることのみならず、経営面へのメリットも期待できると言われています。
これからのメンタルヘルス活動は、従来までの個別の不調者対応型に加えて、組織単位で成長を目的とした、言わばポジティブ・メンタルヘルス活動にも発展しつつあります。
例えば、産業保健や心理学等の関連学会では、そのようなポジティブの面にも着目した研究・実践報告が多くされております。また、EAPというメンタルヘルスを提供する外部機関等も従業員や組織の活性化や、生産性向上を目指したメンタルヘルスのサ-ビスが提供されるようになっています。
ちなみに、外部機関の情報は、【第4章、外部資源のうまく活用する】にご紹介しておりますので、ご参考にしてください。
4-4-4 集団分析の位置づけ方
事業者として、『ストレスチェック制度』をどのように位置づけるかで変わってきます。
そもそもストレスチェック制度を法令順守の活動ととるのか、あるいは衛生面でのさらなる充実のために行うのか、さらには生産性向上も期待した取り組みとするか等、集団分析をどのように位置づけるのかで、その会社の意志が表れるところでもあります。そしてそれは、従業員にも徐々に伝わっていくことになると思います。
しかしながら、 “集団分析”が努力義務として推奨されていたり、または職場のメンタルヘルスにとって効果のある取り組みと言われてはいますが、企業側にとっては、なかなか積極的には取り組みづらい面もあるかと思います。
なぜなら、職場単位で行うことでどのような効果が得られるのか、イメージしづらいからだと思います。一方、提供側である民間のサービス機関や、専門家の間でもこのような職場単位での取り組みへの経験や知見が多くはないのも現状です。
そのため、初年度から集団分析を通じた職場環境の改善活動まで実施できる事業者は多くはないかもしれません。
しかし、すでに実施している企業では、好事例ということで、集団分析を通じた取り組みへの効果は実感されているようです。今後、職場環境の改善の取り組みが増えることが期待されます。
4-4-5 効果の高い取り組みだが、その分ハードルも高い?
集団分析を通じた取り組みへの具体的な効果は大きく、生産性が8%も上がる効果があったとの研究結果も出ています。そしてその費用対効果は、従業員向けの教育研修を行うよりも、集団分析を通じた職場環境の改善活動の方が、より高いと言われています。
しかしながら、集団分析を通じた職場分析を自社に取り入れるには、大変な労力を伴う作業が見込まれます。なぜなら、職場単位で取り組むことなので、現場からは、例えば、「忙しいのでそれをやっている暇がない」等の拒否反応も予想されるのではないでしょうか。
それだけ、今は、多くの職場でゆとりをもてず、目の前の業務に専念せざるを得ない厳しい労働環境だからです。逆にだからこそ、職場のメンタルヘルスや、職場活性化の必要性があるということです。
今後、各事業所において、この集団分析を通じた取り組みをどのように位置づけるかで、職場のメンタルヘルスの流れが変わってくるように思います。