2.準備する➂ ストレスチェック制度「衛生委員会で調査審議が必要な”11項目”」
2016/10/13
ストレスチェック制度をスムーズに導入・実施するにためには、やり方を決める必要があります。法律では、ストレスチェック制度に関しては、衛生委員会での調査審議をふまえ、実施規程を作り、従業員に周知するよう求めています。
ここでは、衛生委員会で調査審議すべき、11項目についてそのポイントを詳しくご紹介します。
目次
- 1. ストレスチェック制度の目的に係る周知方法
- 2. ストレスチェック制度の実施体制
- 3. ストレスチェック制度の実施方法
- 4. 集団集計・分析
- 5. 受検状況の把握の仕方
- 6. ストレスチェック結果の記録の保存方法
- 7. 結果の利用目的・利用方法
- 8. 情報の開示等のやり方
- 9. 情報の取り扱いに関する苦情処理の方法
- 10. 従業員がストレスチェックを受けないことを選択できること
- 11. 従業員に対する不利益扱いの防止
1. ストレスチェック制度の目的に係る周知方法
ストレスチェック制度の目的を定め、周知方法を決めましょう。ポイントは、以下の2点。
□1-1 ストレスチェック制度の目的を決めましょう
□1-2 ストレスチェック制度の周知方法を決めましょう
➡ 1-1 ストレスチェック制度の目的を決めましょう
*ストレスチェック制度は、従業員自ら自身のストレスに気づき、対処できるようになることをサポ-トします。また、集団分析を通じて、職場環境の改善活動を図ります。
*これら、個人と職場向けの言わば両輪の活動を通じて、心の健康が不調になることを”未然に防止する”ことが目的です。この不調者の未然防止を一次予防と言います。そのため、心の健康”不調者を発見する”ということが、主たる目的ではありません。
*また、職場の環境改善を行うことで、これまでの個人向けの取り組みに加え、職場集団単位で活動が加わることにより、職場全体が活性化することも期待できます。その結果、ひいては生産性が向上することにつながっていきます。
*一方で、会社はストレスチェック制度の目的を果たすために、禁止事項(従業員に対しては不利益な取り扱いをしない)を設けていることも明確に知らせましょう。
*キーワードは、不調の予防、職場活性化、生産性の向上、コンプライアンス順守等があります。貴社において、ストレスチェック制度の目的は、どのように位置づけますか?
➡ 1-2 ストレスチェック制度の周知方法を決めましょう
*従業員が安心して、受検できるように、その目的を明らかにして、丁寧に周知をしましょう。なぜなら、ストレスチェックは、言わば、心の健康診断のようなものです。そのため、従業員は、受検をするにあたり、不安や戸惑いを感じている場合があるからです。より多くの従業員に理解され、受検率が高まるように周知をしましょう。
*具体的な周知方法としては、例えば、事前説明会、研修会、掲示、ダイレクトメ-ル等。
*従業員が安心してストレスチェック制度を活用するために、いつ、どのような周知方法を行ったらいいと思いますか?
2. ストレスチェック制度の実施体制
ストレスチェック制度は、事業者の責任において実施するものです。そのため、事業者は、ストレスチェック制度を担うべくすべての担当者を指名して、その役割を決めましょう。また、社外の専門機関・専門家等に依頼する場合もその役割を明確にしておきましょう。
□2-1 ストレスチェック制度担当者
□2-2 実施者
□2-3 実施事務従事者
□2-4 面接指導を担う
□2-5 その他の事務を担う者
□2-6 外部機関に委託する場合
➡ 2-1 ストレスチェック制度担当者
*ストレスチェック制度の実施計画の策定や、実施の管理を主に担います。
*ストレスチェック結果等の個人情報を取り扱わないことから、人事課長など人事権がある立場の方でもこの役割を担うことができます。
➡ 2-2 実施者
*医師、保健師、ならびに一定の研修を受けた看護師・精神保健福祉士である必要があります。仮に、実施者が複数いる場合は、共同実施者および実施代表者を明示します。
*役割は、以下の3点です。
1) 事業者がストレスチェックの調査票を決めるに当たって、事業者に対して専門的な見地から意見を述べること。
2)事業者が高ストレス者を選定する基準や評価方法を決めるに当たって、事業者に対して専門的な見地から意見を述べること。
3)個人のストレスの程度の評価結果に基づき、医師による面接指導を受けさせる必要があるかどうか判断すること。
➡ 2-3 実施事務従事者
*ストレスチェックを受ける従業員に対して、直接的な人事権を有する者は、なれません。
*役割は、実施者の補助的な事務。
*例えば、調査票の回収やデ-タ入力、加えて、実施者から指示を受けて、個人結果の記録作成、個人結果の通知、医師面接の勧奨、集団分析及び事業者への提供などの事務的な部分を担います。
◆注意点
*実施事務従事者は、情報の取り扱いに注意しましょう。
*なぜなら、実施事務従事者は、健康情報等の個人情報を取り扱うため、守秘の保持義務が課せられています。違反すると、法119条1号の罰則で6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。そのため、健康情報を第3者に漏れることがないように細心の注意が必要です。
➡ 2-4 面接指導を担う者
*ストレスチェックにより面接指導が必要とされた場合、その役割を担う者は、医師でなければいけません。
*役割としては、ストレスチェックの結果を細かく確認し、ストレスの要因を聴いて、就業において何らかの対応が必要かどうかを検討します。
*また、セルフケアのアドバイス等を行い、不調につながることを防止することも期待されています。
➡ 2-5 その他の事務を担う者
*人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者が『従事できない事務』と、『従事できる事務』とが以下のように決まっています。
『従事できない事務』(=労働者の健康情報を取扱う以下のような事務)
1)労働者が記入した調査票の回収※、内容の確認、デ-タ入力、評価点数の 算出等のストレスチェック結果を出力するまでの労働者の健康情報を取扱う 事務。
2)ストレスチェック結果の封入等のストレスチェック結果を出力した後の労 働者に結果を通知するまでの労働者の健康情報を取扱う事務。
3)ストレスチェック結果の労働者への通知※の事務。
4)面接指導を受ける必要があると実施者が認めた者に対する面接指導の申出勧奨。
5)ストレスチェック結果の集団ごとの集計に係る労働者の健康情報を取扱う事務。
⇒(※封筒に封入されている等、内容を把握できない状態になっているものを回収又は通知する事務を除く。
『従事できる事務』
1)事業場におけるストレスチェックの実施計画の策定。
2)ストレスチェックの実施日時や実施場所等に関する実施者との連絡調整。
3)ストレスチェックの実施を外部機関に委託する場合の外部機関との契約等に関する連絡調整。
4)ストレスチェックの実施計画や実施日時等に関する労働者への通知。
5)調査票の配布。
6)ストレスチェックを受けていない労働者に対する受検の勧奨
➡ 2-6 外部機関に委託する場合
*外部委託する場合であっても、当該事業所の産業医等の事業場の産業保健スタッフは、その外部委託先と密接な連携体制をとって、共同実施者として関わりを持って、自社の社員へのサポ-トをより発展させていきましょう。
*なお、外部機関にストレスチェックの実施を委託する場合は、その委託契約の委託先における実施者、共同実施者および実施代表者並びにその他の実施事務従事者として、明示する必要があります。
*また、結果の集計等の補助的な業務のみを外部機関に委託する場合も、その委託契約の中で委託先の実施事務従事者を明示する必要もあります。
*詳しくは、【資料 外部機関に委託する場合のチェックリスト】
3. ストレスチェック制度の実施方法
ストレスチェック制度の義務化として実施すべき、『ストレスチェック』と『面接指導』です。それらを実施するにあたっての具体的な方法を決めましょう。
□3-1-1 ストレスチェックに使用する調査票
□3-1-2 ストレスチェックで使用する調査票の媒体
□3-2-1 ストレスの評価方法
□3-2-2 面接指導対象者の選定基準
□3-2-3 医師による面接指導
□3-3-1 ストレスチェック制度の実施頻度
□3-3-2 ストレスチェック制度の実施時期
□3-3-3 ストレスチェック制度の対象者
□3-4-1 面接指導の対応窓口の設置
□3-4-2 面接指導の申し込み方法
□3-5-1 面接指導の実施場所
□3-5-2 面接指導の実施日時
□3-5-3 面接指導に行きやすい雰囲気づくり
□3-5-4 面接指導の頻度
3-1-1 ストレスチェックに使用する調査票
*調査票は、以下の4パタ-ンから決めることになります。
1) 厚生労働省推奨の57項目
2) 厚生労働省推奨の23項目(通称、簡略版)
3) 民間の専門機関が提供している調査票
4) 自社で独自開発する調査票
*ほとんどの事業者さまでは、厚生労働省からの推奨版を使用しているのが一般的なようです。
【資料 調査票57項目】
【資料 調査票23項目】
*他に、その厚生労働省から推奨されている調査票に、独自に開発した調査項目を追加して、提供している民間の専門機関(病院、健診会社、システム会社、EAP:Employee Assistance Program)があります。
*イメ-ジとしては以下です。
⇒厚労省推奨の57項目 + 追加の質問項目*
(*いきいき度、ストレス耐性、フィジカル状態など)
*また調査票については、規則で以下の3領域に関する内容が含まれていることが必要になっています。これらが科学的に検証されている調査票であるなら、オリジナルで開発した調査票を使用してもよいことになっています。
1) 仕事のストレス要因
2) 心身のストレス反応
3) 周囲のサポ-ト
3-1-2 ストレスチェックで使用する調査票の媒体
*調査票の媒体には、2種類あります。
1つが、”ICT”(Information Communication Technology:インタ-ネットや社内イントラネット)を用いる方法、つまり”パソコンやスマホ”を使ってやる方法です。
2つ目が、”質問紙”による調査票で、つまり”紙”です。
*調査票の媒体を決めるにあたっては、いずれかで1つにそろえてもいいですし、ICTと紙とを組み合わせて実施してもいいことにもなっています。
*そのため、媒体は、事業所の都合にあわせて選択できます。多くの従業員が受検しやすい媒体を選択しましょう。
3-2-1 ストレスの評価方法
*まずここで、ストレスチェックでやることをおさらいします。流れは以下の通りです。
1)調査票を決めます
↓
2)ストレスチェックの検査をします。 その検査でわかることは、以下の3つです。
(仕事のストレスの原因、心身のストレス状態、他者からの支援の有無)
↓
3)受検者のストレスの程度を点数化して評価します
↓
4)その評価結果をもとに、高ストレス者が選定されます
↓
5)その高ストレス者の中から、医師による面接指導の要否を決めます
*以上の流れの中で、ここでやるべきストレスの評価とは、【上記3)】のことです。
*つまり、2)のストレスチェックの調査票で把握することができる3項目(仕事のストレス要因、心身のストレス反応、周囲のサポ-ト)の状態を評価するということです。
*その際、受検者本人の気づきを促すために、ストレスチェックの結果は、わかりやすい形にして提供することが求められています。
*例えば、点数化された結果を単に数値で示すだけでなく、ストレス状況が見える化されているようなレ-ダ-チャ-ト等の図表に表すなど。
*ただ、3)の評価方法は、厚生労働省が提供しているプログラムならば、自動化されていますので、担当者が独自に考える必要は、ありません。
3-2-2 面接指導対象者の選定基準
*上記3-2-1.4)の評価結果をもとに、面接指導対象者が(自動的に)選定されますので、事前に、高ストレス者の基準を決めておく必要があります。
*高ストレス者を決める基準は、以下の3項目です「①仕事のストレス要因」、「②心身のストレス反応」、「➂周囲のサポ-ト」です。
*高ストレス者の選定する方法は、2パタ-ンです。
*1つが「①心身のストレス反応」が高い者。
*2つが「①心身のストレス反応」の評価点が一定以上であり、かつ「②仕事のストレス要因」および「➂周囲のサポ-ト」の評価点数の合計が高い者。
*後者の理由は、「心身のストレス反応」が高い者だけを選ぶと、心の健康の不調のリスクが高い人を見失いがちになってしまいかねません。なぜなら、「心身のストレス反応」がそれほど強く症状としてあらわれていなくても、仕事に強いストレスを抱えていたり、周囲とのつながりがなく孤軍奮闘していると、不調のリスクが高まることから、高ストレス者と選定する必要があるからです。
*では、高ストレス者を具体的に選定するにあたっては、3つの評価基準(「①仕事のストレス要因」、「②心身のストレス反応」、「➂周囲のサポ-ト」)の割合を決めるということになります。
*厚生労働省が先行研究を踏まえ、推奨している評価基準があります。
*その評価基準によれば、高ストレス者は全体で概ね10%となるようです。そこで、厚生労働省は、それぞれの事業場の状況により、高ストレス者の割合を変更することも可能であると示しています。
*しかしながら、多くの企業は、高ストレス者の評価基準は、厚生労働省が示している評価基準に合わしているようです。そのため、初年度ということもあり、特別なご事情がない限りは、厚生労働省の基準に合わせた方が、その後、比較検討しやすいかと思います。
*ただ、高ストレス者の選定にあたっては、次の2つのいずれかの評価基準のやり方から、1つを選択しなければいけません。
*1つ目が、A:『評価基準(その1)』
*2つ目が、B:『評価基準(その2)』
では、それぞれの特徴を『職業性ストレス簡易調査票』の57項目を使用する場合についての評価基準の設定の仕方をご説明します。
*まずは、1つ目のA:『評価基準(その1)』
*この方法は、調査票の各質問項目への回答の点数を、単純に合計して得られる評価点を基準に用います。このため、特別な手順によらず算出することが可能です。
*その具体的な評価基準は以下です。
㋐「心身のストレス反応」(29 項目)の合計点数(ストレスが高い方を4 点、低い方を1 点とする)を算出し、合計点数が77 点以上である者を高ストレスとする。
OR
㋑「仕事のストレス要因」(17 項目)及び「周囲のサポ-ト」(9 項目)の合計点数(ストレスが高い方を4 点、低い方を1 点とする)を算出し、合計点数が76点以上であって、かつ、「心身のストレス反応」の合計点数が63 点以上である者を高ストレスとする。
*次に、2つ目のB:『評価基準(その2)』
*この方法は、調査票の各質問項目への回答の点数を、素点換算表により尺度ごとの5 段階評価(ストレスの高い方が1 点、低い方が5点)に換算し、その評価点の合計点(または平均点)を基準に用います。分析ツ-ル(プログラム)が必要ですが、個人プロフィ-ルとの関連がわかりやすく、尺度ごとの評価が考慮された解析方法です。
*その具体的な評価基準は以下です。
㋐「心身のストレス反応」(29項目)の6尺度について、要素換算表により5段階評価のストレスに換算。その6尺度の合計点が12点以下である者は、高ストレスとする。
OR
㋑「仕事のストレス要因」(17項目)の9尺度および、「周囲のサポート」(9項目)の3尺度の計12尺度について要素換算表により5段階評価に換算。12尺度の合計が26点以下でかつ、「心身の反応」の6尺度の合計点が17点以下である者を高ストレスとする。
3-2-3 医師による面接指導
*上記3-2-1.5):その高ストレス者の中から、医師による面接指導の要否を決めます。
*医師による面接指導の対象者を決めるにあたっては、次の2つのやり方があげられます。
・1つ目が、高ストレス者を定量的に一律で決める。
・2つ目が、数量化された高ストレス者から補足面談を行って、定性的に対象者を決める。
*『実施マニュアル』には、調査票に面談を併用する場合のやり方が以下のようにあげられていましたので、ご確認ください。
*『実施マニュアル』の記載事項 調査票に面談を併用する場合
○ 高ストレス者の選定にあたり、調査票に基づく数値評価に加えて補足的に労働者に面談を行う方法も考えられます。
この場合の面談は、ストレスチェックの一環と して行うことになりますが、実施者以外の者に行わせるときは、その者が職場のメ ンタルヘルスに関する一定の知見を有する者(実施者として明示された者以外の保 健師等の有資格者のほか、産業カウンセラ-、臨床心理士等の心理職)であって、面談を行う能力がある者かどうかを実施者が責任をもって確認する必要があります。
また、この場合、面談は実施者の指名と指示の下に実施し、面接指導対象者の 選定に関する判断は、面談を実施した者に委ねるのではなく、面談結果を踏まえて 実施者が最終的に判断する必要があります。
○ また、医師以外の者が面談を行った場合に、面談の中で早急に対応が必要な労働 者を把握した場合は、まずは産業医につなぎ、面接指導の実施、就業上の措置に関 する意見の提示を受けられるようにすることが必要です。
3-3-1 ストレスチェック制度の実施頻度
*事業者は、常時勤務する従業員に対し、1年以内ごとに1回以上、定期的にストレスチェックを行わなければなりません。
*1年以内に複数回実施することは、衛生委員会等での調査審議で合意すれば、可能です。
*一般定期健康診断との同時実施の場合、以下のことを注意しましょう。
*ストレスチェックを一般定期健康診断と同時に実施する場合、ストレスチェックの受検は義務ではないこと。
*一般定期健康診断の結果との取り扱いが異なること(検査結果は本人に通知し、本人の同意なく事業者に通知できないなど)
3-3-2 ストレスチェック制度の実施時期
*ストレスチェックの実施時期については、集団分析も踏まえているならば、なるべく受検期間を短期間にして実施した方がいいでしょう。なぜなら、実施期間が数カ月以上も開いてしまうと、集計の分析に影響するからです。つまり、デ-タの信頼性が落ちてしまうからです。
*そのため、一般健康診断と同時期にストレスチェックを実施する場合は、注意が必要です。なぜなら、一般健康診断が誕生月で実施されると、ストレスチェックの期間が特定されず、その集団における特徴が適切に集計されません。実施時期は、なるべくなら、全社で1カ月以内の期間におさめて実施するよう手配しましょう。
3-3-3 ストレスチェック制度の対象者
*シンプルに言いますと、一般健康診断の対象者と同じです。
*例えば、正社員、パ-トタイム社員、試用期間中の者です。
*派遣社員の方は、実施の義務は派遣元に、ストレスチェックの実施義務があります。
*但し、集団分析をより効果的にするには、派遣先での実施を国は勧めています。
*また、海外赴任者、出向者は雇用契約によって決まります。
*なお、ストレスチェックの実施時期に休職している従業員については、実施しなくても差し支えないとのことです。
***ⅰ 期間の定めのない労働契約により使用される者
(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)
***ⅱ その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
3-4-1 面接指導の対応窓口の設置
*事業者は、ストレスチェックを受検した従業員から申出があったときは、遅滞なく、面接指導を行わなければならない、とされています。
*そのため、実施者に面接指導が必要と認められた従業員が、面接指導を申し出る窓口を明確に決めておきましょう。
*その際、対応窓口を事業者が担うこともできますが、本人が申出しやすいように、産業医や外部委託先とすることもできます。
*事業者以外の者が対応する場合、従業員からの申し出については、事業者にも知らされることになる旨の承諾を得ておくことが重要です。
3-4-2 面接指導の申し込み方法
*面接指導が必要と認められた従業員からの申し出は、そのやり方を決めておきましょう。例えば、書面の提出にするか、電子メ-ルで直接受け付けるか等。
*いずれにしても事業者は、その申し出の記録を5年間保管することが義務づけられています。
3-5-1 面接指導の実施場所
*当該従業員が安心して話すことができる環境を整えましょう。例えば、事業所内であっては、話す声が外に漏れないような個室や、周囲に他者がいない場所が望ましいでしょう。
*一方、事業所外であっては、その場所に出向くにあたって、時間がなるべくかからないような、職場から近い場所が望ましいでしょう。
3-5-2 面接指導の実施日時
*面接指導の申出があってから、概ね1月以内に実施する必要があります。
*面接指導は、原則的に就業時間内に設定しましょう。
*そのため、面接指導を実施する医師とは、なるべく当該従業員が面接指導を受けやすい日時を配慮して、面接の時間を設定しましょう。
3-5-3 面接指導に行きやすい雰囲気づくり
*就業時間内に面接指導を受ける際には、同僚たちに必ずしもその理由を伝えて行く必要はありません。
*しかし事前に、従業員の上司等の理解を得ておくことで、当該従業員が面接指導に行きやすい環境づくりに配慮しましょう。
*つまり、職場の上司には本人が面接指導に行きやすくするために、情報はあらかじめきちんと共有しておきましょう。
3-5-4 面接の頻度
*面談での状況によって、聴き取り・評価・セルフケア等、それらの指導が1 回で実施できない場合もあり得ます。
*そのため、面接指導が複数回に行われる可能性もあることは、視野にいれておきましょう。
*そして、労務管理上の取扱いも含め、あらかじめ衛生委員会等で取り決めて、当該従業員を含む関係者で共通見解を持っておきましょう。
4. 集団集計・分析
集団分析は、事業者の努力義務となっていますが、職場のストレス軽減・職場の活性化のために効果があるとされており、取り組むことが推奨されています。とりわけ、個人だけでは改善できない職場の環境面については、職場集団・環境の状況が把握できることで、職場全体としての取り組みにつなげられやすくなります。
また、集団分析から職場環境の改善活動につながると、職場の健康状態が改善する効果の割合が、集合研修を実施するよりも高くなるという研究報告もなされています。では、集団分析の実施方法についてご紹介します。
□4-1 集団ごとに集計・分析する手法
□4-2 集団集計・分析に必要な人数
➡ 4-1 集団ごとに集計・分析する手法
*以下に、厚生労働省が標準的な項目としている『職業性ストレス簡易調査票』から活用できる『仕事のストレス判定図』についてご紹介します。
*これは、自社の職場集団を、全国平均の標準集団と比較することによって、どの程度健康リスクがある状態なのかを把握することができるものになっています。
*具体的には、東京大学大学院医学系研究科の精神保健学分野で開発されたツ-ルが無料で公開をされていますので、ご参照ください。【リンク先】
*一方、集団分析を独自の手法で行うこともできます。ただし、その場合には、一定の科学的根拠が必要となりますので、これまでの研究や実践事例を参考にして、適切な集団分析の手法をとることが求められています。
4-2 集団集計・分析に必要な人数
*集団分析をするには、一定規模の集団であることが必要です。その一定規模に必要な・人数は、10名以上です。なぜなら、集団分析は受検者のデ-タを活用するため、その個人が特定されないようにするためです。
*一方、10名を下回る組織で集団分析をする場合には、その全員の同意が必要となります。そのため、実施者は10名以下の場合、個人が特定される可能性があることから、集計・分析の対象となる全従業員の同意がない限り、実施者は事業者に関して、集団の集計・分析結果を提供してはいけないことになっています。ご注意ください。
*ただし、平成28年4月に実施マニュアルの改訂がありました。以下にご紹介しておきますのでご確認ください。その結論としては、10名未満であっても、個人特定につながり得ない方法で実施すれば、事業者への提供ができるということになりました。
同意の文書【集団分析に必要な集団の規模】
*集団ごとの集計・分析に関する下限人数の例外 (実施マニュアルより抜粋)↓
集団ごとの集計・分析の方法として、例えば、職業性ストレス簡易調査票の 57 項目の全ての合計点について集団の平均値だけを求めたり、「仕事のストレス判定図」 (P87) を用いて分析したりするなど、個人特定につながり得ない方法で実施する場合に限っては、10 人未満の単位での集計・分析を行い、労働者の同意なしに集計・ 分析結果を事業者に提供することは可能です。
ただし、この手法による場合であっても、2 名といった極端に少人数の集団を集計・ 分析の対象とすることは、個人特定につながるため不適切です。
5. 受検状況の把握の仕方
5-1 事業者が従業員の受検状況を把握することについて
5-2 受検の勧奨のやり方
➡ 5-1 事業者が従業員の受検状況を把握することについて
*事業者は、実施者からストレスチェックの受検状況を把握することができます。
*その場合、実施者は、ストレスチェックの受検状況を把握するにあたって、従業員の同意を得るといったことは必要ありません。一人でも多くの従業員にストレスチェックを受けてもらうようにするためには、実施者からの勧奨だけではなく、事業者からも勧奨することが、ポイントです。
*例えば、受検状況のリストを作っておくと、実施者も把握しやすいでしょう。
*ただ、事業者の勧奨について、以下の点は注意が必要です。
*それは、ストレスチェックを受けた後の結果については、事業者は本人の同意なく、それを把握していけないことになっている点です。
*つまり、事業者としては、ストレスチェックを受けることの勧奨はできますが、受けた後の産業医面談に対してその面談を受けるように勧奨してはいけないことになっていますので、ご注意ください。
*そのため、ストレスチェック後の高ストレス者に対する産業医面談への勧奨は、実施者か、実施事務従事者しかできません。
*以上の点は、事業者としてきちんと理解し、対応については、実施者等との役割分担と連携が重要になります。
➡ 5-2 受検の勧奨のやり方
*前述の通り、事業者は、ストレスチェックを受けていない従業員に対して、ストレスチェックを受検するよう勧奨することができます。
*そのため、どのように受検勧奨するかということは、衛生委員会でよく話し合い、そのやり方を決めて、実施規定にも盛り込んでおきましょう。
*受検への勧奨は、業務命令のような形で強要することのないようにすることが必要です。
*また受検しなかったことをもって懲戒処分の対象とすることは、受検の強要や受検しない従業員に対する不利益取扱いに当たる行為であり、行ってはいけません。
*だから、受検を勧奨するにあたっては、取り組みの趣旨をきちんと伝えて、多くの従業員が安心して受検できるように促しましょう。
6. ストレスチェック結果の記録の保存方法
ストレスチェックの結果の記録と保存についても、事業者の義務として行う必要があります。
□6-2 具体的な記録の保存法
□6-2-1 具体的な記録の保存法【保存内容】
□6-2-2 具体的な記録の保存法【保存場所】
□6-2-3 具体的な記録の保存法【保存期間
□6-2-4 具体的な記録の保存法【保存方法】
□6-2-5 具体的な記録の保存法【保存例】
➡ 6-1 実施事務従事者に記録の保存事務を指示する
*事業者は、ストレスチェック結果についてその記録を作成して、保存する必要があります。
*その際、同意を得られた記録や、同意が得られていない記録の保存は、上記の通りに適切に記録の保存が行われるよう、必要な措置を講じなければならないとされています。
*そのためには、事業者は、実施者以外に、実施事務従事者の中から、記録の保存事務を担う担当者を指名して、適切に保存される体制を整えておきましょう。
➡ 6-2 具体的な記録の保存法
ストレスチェック結果の記録の保存について、厚生労働省から次の5点(内容・場所・期間・方法・例)について示されていますので、ご紹介します。いずれも衛生委員会等で調査審議をした上で、事業者が決定することです。
6-2-1 具体的な記録の保存法【保存内容】
保存が必要な個人のストレスチェック結果の記録の内容は、以下です。
1)個人のストレスチェックのデータ
*個人ごとの検査結果を数値、図表等で示したもの。調査票の各項目の点数の一覧
*又は、個人のストレスプロフィ-ルそのものでも差支えない。
2)ストレスの程度(高ストレスに該当するかどうかを示した評価結果)
3)面接指導の対象者か否かの判定結果であって、受検者が記入・入力した調査票原票は必ずしも保存しておく必要はありません。
4)ストレスチェック結果だけでなく、事業者への提供の同意に係る書面又は電磁的記録についても、事業者が5年間保存するようにしてください。
6-2-2 具体的な記録の保存法【保存場所】
事業者は、調査審議等を踏まえて定められた場所に保管します。
*具体的には、結果が紙の場合⇒事業場内の保管場所(鍵をかける)
*結果がシステム上のデ-タの場合 ⇒企業内ネットワ-クのサ-バ-内(暗証番号)
*外部の委託先 ⇒上記の企業内部と同じ条件のもとで保管することも可能
6-2-3 具体的な記録の保存法【保存期間】
従業員が同意して得られた結果かどうかによって、以下のように異なってきます。
1)本人が同意し事業者に提供された結果
⇒事業者が5年間保存(義務)
2)本人が同意せず実施者が保有する結果
⇒実施者or事業者が指定した実施事務従事者が5年間保存(望ましい)
6-2-4 具体的な記録の保存法【保存方法】
*厚生労働省からは、ストレスチェック結果の記録の保存方法については、紙媒体と電磁的媒体のいずれの方法も可能と示されています。
*詳しくは、厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令(平成17 年厚生労働省令第44 号)に基づき適切な保存を行うことが求められています。ご参照してください。
*内容としては、電磁的媒体を使う時の記録の保存方法が定められている省令です。
6-2-5 具体的な記録の保存法【保存例】
ストレスチェック結果における記録の保存について、以下の図が厚生労働省からの『実施マニュアル』に掲載されておりましたので、ご紹介しますので、ご確認ください。
7. 結果の利用目的・利用方法
ストレスチェック制度で行うべき取り組みは、義務である『ストレスチェック』と面接指導』、そして努力義務である『集団分析』です。これら3つの取り組みを行った後、その結果はどのように取り扱ったらよいのか?安全衛生委員会では、それぞれの利用目的・利用方法等を調査審議しておく必要がありますので、ご説明していきます。
□7-1.ストレスチェックの結果を本人へ通知するやり方
・□7-1-1.ストレスチェック結果の通知の注意点
・□7-1-2.ストレスチェックの結果の通知内容
□7-2.ストレスチェックの実施者が、面接指導の申し出を促すための勧奨方法
・□7-2-1.【申し出を促す勧奨方法】
・□7-2-2.勧奨の際の留意点
・□7-2-3.制度への理解を深めるために留意すべき3つの点
□7-3.ストレスチェックの取り組み結果の『共有方法 』と、『共有範囲』
・□7-3-1.ストレスチェックの結果の共有方法
・□7-3-2.ストレスチェックの結果の共有範囲
□7-4.面接指導の結果の『共有方法 』と、『共有範囲』
・□7-4-1.面接指導の結果の共有方法
・□7-4-2.面接指導の結果の共有範囲
□7-5.集団分析の結果の『共有方法 』と、『共有範囲』
・□7-5-1.集団分析の結果の共有方法
・□7-5-2.集団分析の結果の共有範囲
□7-6ストレスチェック結果を事業者へ提供するにあたっての本人同意の取得方法
□7-7.本人の同意を取得した上で、実施者から事業者に提供するストレスチェック結果に関する情報の範囲
➡ 7-1 ストレスチェックの結果を本人へ通知するやり方
7-1-1 ストレスチェック結果の通知の注意点
ストレスチェックの実施後、実施者又はその他の実施事務従事者から遅滞なく(1カ月以内)受検者本人に結果の通知をしましょう。
【ストレスチェック結果の通知の注意点】
その際、次の3点に気をつけて、通知しましょう。
1)受検した従業員に、封書または電子メ-ルで、個別に直接通知しましょう。
2)面接指導の対象の場合は、その要否が他の者に気づかれないように配慮して通知をしましょう(例、自宅に郵送、電子メ-ル等)。
3)ストレスチェックの結果は、従業員からの個別同意がなければ、事業者には通知できません。
7-1-2 ストレスチェックの結果の通知内容
ストレスチェックの結果で通知する内容は、以下の4点です。
1)個人のストレスチェック結果(ストレスプロフィ-ル)
2)個人自らで気づくことができるセルフケアのアドバイス
3)面接指導の対象の人には、面接指導の申出窓口の連絡先や、申出の方法
4)全ての受検者に、個別に相談できる窓口の情報提供
➡ 7-2 ストレスチェックの実施者が、面接指導の申し出を促すための勧奨方法
面接指導の申し出を勧奨できるのは、実施者と実施事務従事者となり、対象者からの申し出がない限りは、事業者はその対象者を把握してはいけないことになっています。
そのため、高ストレス状態にある従業員がその状態からいち早く改善するためにも、面接指導につながってほしいところです。
7-2-1 申し出を促す勧奨方法
ストレスチェックの結果で高いストレス状態にあり、医師の面接指導が必要となっている従業員のことを把握した実施者等は、次のやり方で申出の勧奨をすることが、厚生労働省からの実施マニュアルに示されています。
1) 実施者が個人のストレスチェック結果を本人に通知する際に、面接指導の対象者であることを伝え、面接指導を受けるよう勧奨する方法。
2)個人のストレスチェック結果の通知から一定期間後に、実施者が封書又は電子メ-ルで本人にその後の状況について確認し、面接指導の申出を行っていない者に対して面接指導を受けるよう勧奨する方法。
3)面接指導の申出の有無の情報を、事業者から提供してもらい、すでに事業者に対して申出を行った従業員を除いて勧奨する方法。
7-2-2 勧奨の際の留意
勧奨の際の留意点としては、厚生労働省の実施マニュアルについて、以下のことが示されていますので、確認をしておきましょう。そして、勧奨する際に、最も気をつけねばいけないことは、「勧奨される側の立場になって考える」ということではないでしょうか。
なぜなら、初めてのストレスチェックで自分が高いストレス状態にあり、さらに医師の面接が必要と指摘されているということで、不安な心境になっていると思われます。
例えば、「自分はダメな社員?」「何を聴かれるの?」「仕事から外される?」「行ったところで解決しない?」「周りから弱い人間と思われる?」という不安や心配を抱いているかもしれません。
そのため、面接指導についての勧奨には、十分に配慮をもって行いましょう。次に留意点をあげておきます。
1)面接指導の申出を行わない従業員に対しての勧奨は、実施者以外では、実施事務従事者に限って可能です。
2)本人の同意があり面接指導が必要であるという評価結果を事業者が把握している従業員に対しては、必要に応じて、申出の強要や申出を行わない労働者への不利益取扱いにつながらないように留意しつつ、事業者が申出を勧奨することも可能です。
3)面接指導を受けるかどうかは、あくまで勧奨を受けた本人の選択によります。しかし、制度の実効性を増すためには、事業場において面接指導が必要と判断された従業員ができるだけ申し出やすい環境づくりが重要です。
4)また、面接指導を申し出なかった人は、別の場所で相談につながれるようにするために、専門機関の紹介などの支援を必要に応じて行いましょう。
7-2-3 制度への理解を深めるために留意すべき3つの点
*今回から新たに法律で義務化されたストレスチェック制度。もちろん、これまでも職場の心の健康づくり活動(=職場のメンタルヘルス)の推進については、厚生労働省から求められてきたところです。
*その心の健康づくり活動の全産業における実施率は、平成25年には60%を上回ったようでした(厚生労働省発表データ)。
*今後、厚生労働省としては、この実施率の目標を80%以上、最終的には100%の実現も視野に入れているとのこと。
*しかしながら、ストレスチェックは、今回が初めての取り組みなので、多くの事業所においては、試行錯誤で進められています。
*今後、ストレスチェック制度が自社に根づく取り組みとなるには、何より事業者を始めとした、全労働者の理解と協力が必要です。
*このように、ストレスチェック制度への理解を深めるために、厚生労働省の実施マニュアルでは、以下の点が挙げられていましたので、ご確認することをおすすめします。
1)情報の流れの明確化
従業員が安心感をもてるよう、図表などのわかりやすい方法により、個人情報保護に関連する事項、即ちストレスチェックの結果(個人のストレスプロフィ-ルやストレスの程度の評価結果)、面接指導の必要性の有無、面接指導の内容などが、どのような経路でどの範囲に伝えられるのかを明らかにしましょう。
2)手続きの簡素化と秘匿化
面接指導を勧奨された従業員が面接を申し出る際には、できるだけ簡単な手続きで申し込めるようにしましょう。申し込み手続きは周囲の者に知られることなく完了できるように配慮しましょう。窓口を明確化し混乱のないようにしましょう。
また、面接指導のため従業員が職場を離れることが想定されるため、面接指導の実施日時等の情報は労働者の上司と共有しておく必要があります。
3) メンタルヘルス教育
メンタルヘルス指針にあるように、日頃よりメンタルヘルスケアについて正しい知識を付与することが、従業員からの面接指導の申出の割合を高め、周囲の者の理解を得るのに役立ちます。例えば、産業医等面接指導を実施する医師が、メンタルヘルス教育の一部を担当すれば、労働者により親しみやすくなるでしょう。
➡ 7-3 ストレスチェックの取り組み結果の『共有方法 』と、『共有範囲』
衛生委員会の調査審議をふまえ、事業者は従業員のストレスチェックの結果を、把握するかどうかを決めることができます。
仮に、把握を行う場合には、従業員個々人からの同意が必要となります。そしてそのためには、ストレスチェック結果の『共有方法』と『共有範囲』を決めておく必要があります。
ストレスチェック制度が適切に運用されるためには、従業員の健康情報の保護が適切に行われることが重要であり、事業者等が従業員の秘密を不正に入手されないような仕組みにする必要があります。
以下に、ストレスチェック結果の把握を行う場合のやり方をご紹介します。
ちなみに、ストレスチェック結果の把握は行わないこととした場合では、従業員からの同意取得の手続きは不要となります。
7-3-1 ストレスチェックの結果の共有方法
step 1.ストレスチェックの結果を通知
(実施者等➡受検した従業員)
↓
step 2.同意の意志確認
(実施者等➡受検した従業員:書面・メ-ルにて依頼)
↓
step 3.同意の意志表明
(受検した従業員➡実施者等:同意書にサイン)
↓
step 4.ストレスチェック結果の提出
(受検した従業員➡実施者等:結果のコピ-を提出)
↓
step 5.ストレスチェック結果の保管
(実施者等➡人事労務部門:5年間保存)
7-3-2 ストレスチェックの結果の共有範囲
ストレスチェック結果は、従業員からの同意を得たからと言って、むやみに共有してはいけないことになっています。
具体的には、事業者は、本人の同意により事業者に提供されたストレスチェック結果を、当該従業員の健康確保ための就業上の措置に必要な範囲を超えて、当該従業員の上司又は同僚等に共有してはならないものとされています。
例えば、社員の同意を得て会社に提供されたストレスチェックの結果の写しは、人事労務部門内のみで保有し、他の部署の社員には提供しない。
本人の同意により事業者に提供されたストレスチェック結果の共有範囲や利用方法については、あらかじめ衛生委員会等で調査審議を行い、事業場のル-ルを決めて、周知しておきましょう。
➡ 7-4 面接指導の結果の『共有方法 』と、『共有範囲』
面接指導における個人情報の取扱いについては、「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(平成24 年6月11 日基発611 第1号)に基づく必要があるものとされています。以下、厚生労働省から示されている内容です。
面接指導を行うに当たり、面接指導の結果(個人情報)をどのように利用するか、従業員に説明し、同意を得ることが望まれます。
医師は、面接指導で聴取した内容のうち、対象者の安全や健康を確保するために事業者に伝える必要がある情報については、事業者が適切な措置を講じることができるように詳細な内容を除いて労務管理上の情報として提供しますが、事業者への意見提出においては対象者の意向への十分に配慮をしましょう。
7-4-1 面接指導の結果の共有方法
面接指導を実施した医師から提供された『面接指導結果報告書兼意見書』は、人事労務部門内のみで保有します。そのうち就業上の内容など職務遂行上必要な情報に限定して、該当する社員の管理者等に提供します。
7-4-2 面接指導の結果の共有範囲
面接指導を実施した医師から提供された『面接指導結果報告書兼意見書』は、人事労務部門内のみで保有します。そのうち就業上の内容など職務遂行上必要な情報に限定して、該当する社員の管理者等に提供します。
➡ 7-5 集団分析の結果の『共有方法 』と『共有範囲』
集団分析を実施した場合、個人が特定されないような集計・分析を行えば、その結果の取り扱いについて、従業員の同意は必要ありません。但し、集計の単位が10名を下回る組織においては、従業員全員の同意が必要になっています。
しかし例外として、個人の特定につながり得ない方法で実施する場合には、従業員の同意なしで集団の集計や分析は可能です。
7-5-1 集団分析の結果の共有方法
実施者の指示により、実施事務従事者が、会社の人事労務部門に、組織ごとに集計・分析したストレスチェック結果(個人のストレスチェック結果が特定されないもの)を提供します。
事業者は、組織ごとに集計・分析された結果に基づき、必要に応じて、職場環境の改善のための措置を実施・指示を出します。また、必要に応じて集計・分析された結果に基づいて管理者に対して研修を行い、職場環境の改善のための措置の取り組みを実施していきます。
7-5-2 集団分析の結果の共有範囲
*実施者から提供された集計・分析結果は、人事労務部門で保有するとともに、組織ごとの集計・分析結果については、当該課の管理者に提供できます。
*また、組織ごとの集計・分析結果とその結果に基づいて実施した措置の内容は、必要に応じて衛生委員会に報告し、共有しましょう。
*一方で、集団ごとの集計・分析の結果は、無制限にこれを共有した場合、当該責任者等に不利益が生じるおそれもあることから、事業場内で制限なく共有することは不適当とされますので、注意しましょう。
*なぜなら、集団ごとの集計・分析の結果は、その集団の責任者にとっては、その当該事業場内における評価等につながりかねない情報だからです。
➡ 7-6 ストレスチェック結果を事業者へ提供するにあたっての本人同意の取得方法
*情報開示の本人同意について、事業者は、ストレスチェック結果が従業員に知らされる前に、本人の同意を取得してはいけないことになっています。
*なぜなら、ストレスチェックの結果によっては、会社に知られたくないと思うことが予想されるからです。
*そのため、ストレスチェックの結果ついて、本人に対して同意を得る方法は、次となります。
1)受検したすべての従業員に対して、ストレスチェックの結果を通知した後に、事業者等が個別に同意の有無を確認する方法
2)面接指導が必要となった対象者に対して、他の従業員に知られない方法で、個別に同意の有無を確認する方法
なお、その際に注意点があります。
*それは、ストレスチェックを受け、面接指導の申出を行った場合には、その申し出をもってストレスチェック結果が、事業者に提供されることになるからです。
*そのため、医師の面接指導を申し出た時に、当該従業員に対してその旨をきちんと伝え、同意を得ることが必要となります。
➡ 7-7 本人の同意を取得した上で、実施者から事業者に提供するストレスチェック結果に関する情報の範囲
提供するストレスチェック結果に関する情報の範囲
*ストレスチェックの結果は、従業員からの同意を得たからと言って、むやみに共有してはいけないことになっています。
*具体的には、事業者は、本人の同意により事業者に提供されたストレスチェック結果を、当該従業員の健康確保ための就業上の措置に必要な範囲を超えて、当該従業員の上司又は同僚等に共有してはならないものとされています。
*また、実施者はストレスチェック結果そのものではなく、当該従業員が高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があるという情報のみを事業者に提供する方法もあります。
➡ 7-8 集団分析の活用方法
*ストレスチェック制度の目的は、一次予防であるため、従業員個人のセルフケアを進めるとともに、組織単位、つまり職場環境の改善に取り組むことも重要です。
*そのため、個人のストレスチェック結果を職場単位で集計・分析することにより、職場単位でのストレスの状況を把握することもできます。
*これは、予防という観点以上に、職場活性化により生産性の向上も期待できる取り組みになり得ます。
*そのため、事業者は、職場分析から、職場環境改善に向けて、どのような措置を講じたらよいか、産業医・保健師等の実施者以外にも、その他臨床心理士や、産業カウンセラ-、心理相談員などの専門家からの意見も聴くことが望まれています。
*一方で、厚生労働省からの実施マニュアルでは以下のことも指摘されていますので、ご確認をしておいてください。
*集団ごとの集計・分析の結果は、集計・分析の対象となった集団の責任者にとってはその当該事業場内における評価等につながり得る情報であり、無制限にこれを共有した場合、当該責任者等に不利益が生じるおそれもあることから、事業場内で制限なく共有することは不適当です。
*集団ごとの集計・分析の方法、分析結果の利用方法(集団ごとの集計・分析結果の共有範囲を含む。)等については、衛生委員会で審議した上で、あらかじめ各事業場での取扱いを社内規程として策定することが必要です。
*産業医等と連携しつつ、職場環境の改善のために、集団分析の結果をふまえて、各職場における業務の改善や、管理監督者向け研修、衛生委員会等での活用方法について、検討・実施することが推奨されています。
8. 情報の開示等のやり方
ストレスチェック制度の3つの取り組み(『ストレスチェック』、『面接指導』、『集団分析』)について、従業員から情報の開示、訂正、追加、削除の申し出があった場合に対応する手続きを定めておく必要があります。
そのために、厚生労働省から示されている『実施規定』にその具体例がありますので、以下にご紹介します。
□8-1.情報の開示等の手続き
□8-2.情報開示等の業務に従事する者の秘密保持の方法
➡ 8-1 情報の開示等の手続き
例『第33条 社員は、ストレスチェック制度に関して情報の開示等を求める際には、所定の様式を、電子メ-ルにより 課に提出しなければならない。』
従業員からの情報開示等への要望に対応するために、あらかじめ一定のル-ル(書式の準備、運用法、担当者など)を決めておき、従業員に周知しておきましょう。
➡ 8-2 情報開示等の業務に従事する者の秘密保持の方法
例『(守秘義務)第35条 社員からの情報開示等や苦情申し立てに対応する 課の職員は、それらの職務を通じて知り得た社員の秘密(ストレスチェックの結果その他の社員の健康情報)を、他人に漏らしてはならない。』
ストレスチェック制度の運用においては、おそらく実施事務従事者がその役割を担うでしょう。そのため、健康情報を取り扱うことで生じる守秘義務について、適切に理解するように教育を徹底することが望まれます。
9. 情報の取り扱いに関する苦情処理の方法
ストレスチェック制度の3つの取り組み(『ストレスチェック』、『面接指導』、『集団分析』)について、従業員からの苦情に対応する窓口・ル-ルを設けておく必要があります。
□9-1 苦情処理の手続き
□9-2 苦情処理の窓口を外部機関に設ける場合
➡ 9-1 苦情処理の手続き
従業員からの苦情に対応するために、あらかじめ一定のル-ル(書式、対応法、担当者など)を決めておき、従業員に周知しておきましょう。
➡ 9-2 苦情処理の窓口を外部機関に設ける場合
ストレスチェック指針では、以下のように示されていますので、ご確認し、ご対応ください。
『苦情の処理窓口を外部機関に設ける場合は、当該外部機関において労働者からの苦情又は相談に対し適切に対応することができるよう、当該窓口のスタッフが、企業内の産業保健スタッフと連携を図ることができる体制を整備しておくことが望ましい。』
10. 従業員がストレスチェックを受けないことを選択できること
➡ 10-1 従業員がストレスチェックを受けないことを選択できること
ストレスチェックの受検を義務にしなかったかと言えば、特別な事情を抱えている労働者への配慮です。なぜなら、例えば、すでに治療しながら働いている従業員に対して余分な負担をかけないようにするためです。
しかしながら、厚生労働省が掲げる理想は、全ての従業員がストレスチェックを受検し、セルフケア活動につなげ、未然の予防になることです。そのため、厚生労働省が示している『ストレスチェック指針』では、以下のように示しています。
『労働者にストレスチェックを受検する義務はありません。しかし、ストレスチェック制度を効果的なものとするためにも、全ての労働者がストレスチェックを受検することが望ましいという制度の趣旨を事業場内で周知する方法』が不可欠です。
そのためには、従業員に対してストレスチェック制度の趣旨を丁寧に周知して、受検を促すことが重要です。厚生労働省が示している『ストレスチェック制度の実施規程』には、以下のように例示されていますので、確認をしておきましょう。
(受検の方法等)第10条
1 社員は、専門医療機関に通院中などの特別な事情がない限り、会社が設定した期間中にストレスチェックを受けるよう努めなければならない。
2 ストレスチェックは、社員の健康管理を適切に行い、メンタルヘルス不調を予防する目的で行うものであることから、ストレスチェックにおいて社員は自身のストレスの状況をありのままに回答すること。
3 会社は、なるべく全ての社員がストレスチェックを受けるよう、実施期間の開始日後に社員の受検の状況を把握し、受けていない社員に対して、実施事務従事者又は各職場の管理者(部門長など)を通じて受検の勧奨を行う。
11. 従業員に対する不利益扱いの防止
➡ 11-1 不利益な取り扱いの防止事項
ストレスチェック制度を導入し、それぞれの取り組みを行う中で会社は、従業員が不利益となるようなことを行ってはいけません。そのため、不利益な取り扱いを禁止している旨を定め、しっかりと従業員に周知しましょう。
厚生労働省から示されている『ストレスチェック制度の実施規程』には、以下のように不利益な取り扱いの防止事項が定められています。これをもとに自社としての防止事項を定めて、周知させましょう。
第7章 不利益な取扱いの防止
(会社が行わない行為)
第36条 会社は、社内掲示板に次の内容を掲示するほか、本規程を社員に配布することにより、ストレスチェック制度に関して、会社が次の行為を行わないことを社員に周知する。
一 ストレスチェック結果に基づき、医師による面接指導の申出を行った社員に対して、申出を行ったことを理由として、その社員に不利益となる取扱いを行うこと。
二 社員の同意を得て会社に提供されたストレスチェック結果に基づき、ストレスチェック結果を理由として、その社員に不利益となる取扱いを行うこと。
三 ストレスチェックを受けない社員に対して、受けないことを理由として、その社員に不利益となる取扱いを行うこと。
四 ストレスチェック結果を会社に提供することに同意しない社員に対して、同意しないことを理由として、その社員に不利益となる取扱いを行うこと。
五 医師による面接指導が必要とされたにもかかわらず、面接指導の申出を行わない社員に対して、申出を行わないことを理由として、その社員に不利益となる取扱いを行うこと。
六 就業上の措置を行うに当たって、医師による面接指導を実施する、面接指導を実施した産業医から意見を聴取するなど、労働安全衛生法及び労働安全衛生規則に定められた手順を踏まずに、その社員に不利益となる取扱いを行うこと。
七 面接指導の結果に基づいて、就業上の措置を行うに当たって、面接指導を実施した産業医の意見とはその内容・程度が著しく異なる等医師の意見を勘案し必要と認められる範囲内となっていないものや、労働者の実情が考慮されていないものなど、労働安全衛生法その他の法令に定められた要件を満たさない内容で、その社員に不利益となる取扱いを行うこと。
八 面接指導の結果に基づいて、就業上の措置として、次に掲げる措置を行うこと。
① 解雇すること。
② 期間を定めて雇用される社員について契約の更新をしないこと。
③ 退職勧奨を行うこと。
④ 不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換又は職位(役職)の変更を命じること。
⑤ その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること。